学生の頃、実家が開業医の歯医者さん、というのが自慢で、二言めには「うちのパパは歯医者さんだから〜」と得意げに鼻を膨らます少々うざったいクラスメイトがいました。





　まあまあかわいい部類の子で、いつもお金のかかった格好をしていたけれど、彼女のコンプレックスは「さとう」という平凡な名字。





　なので、あまりにもうざったくなると、私たちはいつも、わざと忘れたふりをして、





「そうそう、パパは歯医者さんなのよね〜？なんて言う病院なんだっけ？」


「さとうだから、さとう歯科？」


「ああ、さとう歯科だっけ？」


・・と、地味〜な名字をからかってました。





　そうすると彼女はいつもぷーっとふくれて、ぷいっといなくなってしまうので、話はいつもそこで終わっていたのだけれど、ふと気になって、「本当はなんて言う歯医者さんなの？」と聞いてみたことがあります。





　すると彼女は目を輝かせて、自慢そうに答えてくれました。





「ハートウォーミング・・・・・・クリニック（一部伏せ字）よ！」





　意表をつく恥ずかしい名前だったので、私はよほど「さとう歯科」のほうがマシ・・と言いたくなりました。





　・・今日、たまたま外回りをしていたら「佐藤歯科医院」という建物を見つけて、思い出した話です。